2基の離れた機械を用いて、一方からもう一方へと物質を転送させるという画期的な装置を発明した科学者のセス。しかし、自らの肉体で実験を行ったとき、装置内に入り込んでいた1匹のハエとともに転送されたことから、やがて肉体と精神に異変が起こり始める。

 ほとんど覚えていないけど、小さいときに見たことがあった。今見直してみるとこれがよく出来てる。CGではなく特殊メイクで作られた蝿男の生々しさ。グロいとはこのことだわ。
 一応SFホラーに分類されるんだろうけど、ホラー成分は少ない。自分の体と心が除々に変質していくという主人公側の恐怖はあるけど、それも怖さよりも哀れさを感じさせる。
 それは主人公が自分の体をおどけて説明するシーンで強く思う。
 
 「やっとハエの食べ方を覚えた。ハエには歯がないから固い物は食べられない。大きいと消化しきれない。だから溶解力の強い酵素液を出して、かける。胃液だね。それで食物を溶かすんだ。そして吸い上げる。実演するよ」

 わざわざ恋人の前でする。悲しくなる自虐。悩んだり自暴自棄になったり必死に生にしがみつこうとしたり、こんな人間味のある怪物ではホラーにならない。
 恋人も、不意に胃液を吐いたり耳がもげたりする主人公を抱きしめるような情の深い女なんだけど、妊娠したと知って巨大な蛆虫を出産する悪夢にうなされて堕胎しようとする。
 登場人物は少ないけど、みんな複雑なキャラで色々考えてしまう。
 「ハエ男の恐怖」のリメイク作で、タイトルから典型的な単純B級ホラーだと見られてると思うけど、そうではない。悲恋ものとしても名作よ。表現がエグいので万人には勧められないけど、グロいの大丈夫だって人には見てほしい映画ですね。やっぱりクローネンバーグはすごいよ。

コメント

フォフォフォ3
2013年7月31日23:23

2の後半の圧倒的B級臭が好き。前半との落差がありすぎて噴く

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